網膜剥離になっちゃった2 「嘆きのバックリング手術」

 

「嘆きのバックリング手術」

さて、網膜剥離と言っても、ちょっとしたレーザー治療で済むものから何回も手術が必要なものまで色々だ。剥離の数が多く、範囲が広く、穴が深いほど重症だ。また場所によっても違いがあるそう。治り方も様々、視力回復にもかなりの差があるのは、後から複数の剥離友達から聞いてわかったことだ。

 

ここで唐突に自己紹介をしておくと、私はクラリネット奏者で、演奏や後進の指導を仕事にしている。実はこの時、1ヶ月後にクリスマスコンサートを控えていた。

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毎年開いているチャリティコンサートだが、昨年はコロナのために中止を余儀なくされた。今年はなんとか開催にこぎつけ、チラシも配布済み、チケットもほぼ完売なので、どうしても中止にするわけには行かず、実はパニックだった。

先生にはまず「何としても12月のコンサートまでに楽器が吹ける状態になっていないと困るんですっ!!!」と焦りまくって訴えた。医者というものはしかし、最悪の事態も想定して、決して、絶対大丈夫とは言わないものだ。術後順調に回復すれば大丈夫とは思うけど、こればっかりはやってみないとわからない。10人に1人は予後の良くない人もいるし、楽器の演奏というものが術後の目に与える影響はわからない、ということだった。

 

それでも私の切羽詰まった様子を見てなる早で無理やり手術をねじ込んでくれたり、自らPCR検査を行ってくれたり、とても誠意ある対応をしてくれた。しかしこの時の私は、1ヶ月後のコンサートとその後にも入っているいくつかの公演ことで頭がいっぱい。少し前までならコロナで公演は軒並み中止になり毎日暇だったのに、やっと仕事ができるようになった今なぜ?という恨み言も。正直、手術の事より、仕事関係が頭の8割を占めていた。眉間にシワを寄せて詰め寄るわがままな患者そのものだったろう(汗)

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そんな私を見て「今は、失明するかもしれないというレベルの話をしているのですよ」と、とうとう先生からやんわり諭されることとなった。

とにかく放っておけば失明するのだから、仕事があろうが無かろうがすぐ手術をするしかなく、上手く行かなければうまく行くまで何回も手術するしかないのがこの病気。手術しないという選択肢は無いのだから騒いでも仕方がないのだ。

 

そんな不安を抱えてのバックリング手術は入院したその日に行われた。

この手術は局所麻酔で意識があるし、ぼんやりととはいえ見えるので、はっきり言って怖い!私の場合は白内障の手術の経験があったので、今回は随分恐怖感が薄れたのはよかった。数時間前からの目薬と、目の下に麻酔の注射をするので、最初は痛みはそれほどでもなく、様々な色がお花畑のように見えてキレイなんて思っていた。剥離友達には「寝ちゃった」という豪傑もいた。しかし私の剥離は下の奥深くと場所が悪く、バックリングがうまくいかず手術は1時間半以上かかり(これは長い方らしい)しかも麻酔が切れてきて最後の方は痛かった~。かなり痛かった(涙)

その上、結果的にはこの方法ではうまくいかず剥離は治らなかった。バックリングが無駄だったわけではない、ということは後からわかるのだが、この時はキツかった。おまけにどういうわけか術後は目の周りがアザだらけ、KOパンチを食らったボクサーかDVにあってる奥さんか?!昔風ならお岩さん!目の周りを切ったりはしていないのだから、手術器具で押されたりこすられたりしたせいなのか?私以外にこんな人はいなかった。なぜ?肌が弱いのだろうか。ちょっとショックだった。

痣はすぐ治ると言われたが(完全に消えるまで1ヶ月くらいかかった)、見え方が良くならなければ、次は硝子体手術を受けることになる。痛い思いをしたのに良くならず、この期間が私の嘆きのピークだった。

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ところで、手術室は寒かったですよ。手術前には絶対トイレに行っておいた方が良いです。行きたくなくても行っておくべし。万が一手術中に行きたくなっても行かせてはもらえないので、男性はチューブで女性はオムツで対処するそう。う~む、それは避けたい、極力避けたいですよね。

 

この嘆きの期間に、やっと親しい友人たちに剥離のことをLINEした。

その時の友人たちの励ましの言葉がどんなにありがたかったか。特に網膜剥離で硝子体手術を受けた、友人の旦那様の体験談が何より支えになった。個人差があるとはいえ、やはり実際に体験した人の話は貴重だ。

彼は小児科医だが、術後2週間で仕事に復帰し10年近く経った今も再発はなく、支障なく仕事をしているという。

その他にも、ネットで網膜剥離になった有名人(ウーマンラッシュアワーの村本とか小林幸子とか)を調べたり、一般の方のブログも参考になったので、少しでも剥離になった人の不安が軽くなればと、このブログを書いているわけだ。

 

人は負の感情に陥った時、「嘆き」→「諦め」→「悟り」の3段階を経て立ち直るものです。とは、誰のお言葉でもない、私の勝手なお言葉です。(笑)

ここまでが私の「嘆きの期間」。辛かったな。

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